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くすくす姫と百人の婚約者(フィアンセ)
第17章 99人目の婚約者
小さな国に、夏が来る頃。

「姫様、靴下は新しいものを下ろしましょうよ」
スグリ姫は、初夏に釣り書きを受け取った相手と、99回目のお見合いをすることになりました。

「えーなんでー?いいじゃん、これでも」
「穴開いてますよ、それ」
「見えないところだもん、構わないよ?」
侍女のバンシルとお召し物の準備に余念がありませんが、普通の姫の着飾る準備と、どこかずれています。

「よしっ、完璧!」
ぽん、とウエストの飾りベルトを叩くスグリ姫に、バンシルは心の中で(ええ完璧ですね、その大穴以外は)と、呟きました。

「バンシルー、お見合い相手のお名前、なんだっけ?」
「動かないでください、紅が差せません」
んむぅと口をつぐむ姫に慎重に化粧を施し終えて、バンシルはほっと息を吐きました。

「タンム卿ですよ。ほら、あの南の国境近くの」
「そうそう!果物王国よね!」
思い出した!とはしゃぐ姫を見て、バンシルは軽く頭痛がしました。

今まで98人の殿方をお見合いをしたと言うのに、スグリ姫には、どこか世慣れていないところがありました。
それが「特異体質」のせいなのか、もともとの性格なのかは、分かりません。
98人の殿方とお見合いをしたということは、98人の殿方と体の相性を確かめ合い、その上で結婚が叶わなかった、ということです。
ただ、世の中の下世話な噂の通り、スグリ姫と98人のお見合いのお相手は、「最後までイッた」ことがありません。
くすくす姫と言う仇名の通り、コトの最中のどこかで、スグリ姫が爆発的に笑ってしまうのです。
そして大抵、その笑いは、なかなか終わることが無く。
どんなに肝が太いと自負する殿方でも、肉体的にか精神的にか、または両方かが萎えてしまって、お見合いの最終段階をクリアできずにご破算となるのでした。

「あー、楽しみだなあ、果物王国!!」
きっとお土産持ってきてくれるよね?とニカっと笑うスグリ姫を見て。
バンシルは、99人目のお見合い相手が最後まで致せることは望めなくても、せめていい人でありますように、と。
溜息混じりに、祈るのでした。
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