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第3章 王子か、姫か

小さな国の王が、数えて十四世となった時のことです。

代替わりしたばかりの王と后の間に、御子が授かりました。
先代の王と皇太后も、息子夫婦のおめでたを大変喜びました。

下々のものも、国を支える次の世代の誕生を、心待ちにしました。
心待ちにするあまり、「お生まれになるのは王子か、姫か」で人々は大層盛り上がりました。
后の懐妊が発表されて以来、老若男女を問わず、街角の世間話で天気の次に交わされるのは「王子か、姫か」。
あまりに話題になりすぎて賭け事を始めるものまで現れ、目立つものは公に取り締まられる騒ぎになる始末。
そんなことがあっても、下々のお祝い気分には、水を差されることはありませんでした。
町の酒場では、性懲りも無くこっそりと、来るべき「王子か姫」の誕生祝の酒盛りの、酒代を賭けたりすることが続いておりました。

小さな国の十四代の王は結婚が遅く、国民は親身になって心配をしていたのです。
国の人々の喜びっぷりが暴走するのも、無理からぬこと。

そんな、国中が出産を待ち受けるお祝いムードに包まれて、王と后を初めとする城の面々は、穏やかで幸せな日々を過ごしておりました。