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第7章 めじけ 章7第


泣きじゃくっていたあの日から、桜は少しだけ笑うようになっていた。



そうは言っても、たまに思い詰めた顔をするし、まだまだ辛そうではある。



でも、和明の匂いも、樹の匂いも纏うことは無くなった。



流しの方に目をやると、桜は汗を拭っている。



その姿が、2年前、桜が初出勤の日の姿と少し重なった。



確かあん時…ゴキブリ出てめちゃくちゃ騒いでたよな。




そんな事を思い出して、俺は緩く笑った。





ゆっくりかもしんねぇけど、あいつは変われてる。




安心していると、奥からすみません!と客の声がした。





「桜、奥のお客のオーダー取って」



「はい」





手を拭いてカウンターを出た桜。



そして、オーダーを待っていると店の扉が開いて、桜がすかさず「いらっしゃいませ」と声を掛けた。





「いらっしゃ──」




俺もそれに声を掛けようとして、扉の方を見た。


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