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第9章 唇 章01第



横殴りの雨で、服が濡れていく。



無理矢理あんなことして、桜が混乱するのなんて分かったはずだ。



でも、堪えられなかった。



本当に俺はバカでどうしようもない。



ようやく桜が少しでも本音を言える、そういう相手になれていたのに。




「なかったことに…なんねぇかなぁ…」




雨に晒されながら、自嘲地味に笑って俺はそう呟いた。




やり直したい。



「無理に笑うな、泣きたいときは泣けばいい」と…そう言って、頭を撫でてやるだけで良かったはずだ。



スマホを取り出して時間を見た。




日付はとっくに超えている。




このまま帰ったら、一生桜は俺の前に姿を見せなくなりそうで怖くなった。



扉を開けてくれねぇなら、桜が出てくるまで待って……


謝って……


今まで通り、なんかあったら来いって、そう伝えたい。





今まで通り…か…。



そんなこと出来んのか。






あぁ…



こんな体調じゃ、どう考えても実家……行けねぇ。




震える手で兄貴にLINEをした。





ったく……何も出来てねぇじゃねぇかよ。


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