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第10章 体正 章11第


「あ、あの」




そう言葉を発した桜はそのまま病室から去ろうとしている。




「店長、私……」



「待て」




急いで立ち上がった桜を俺は引き止めた。



今を逃したら、もう次はない。






「いくな……」




再びベッドから上体を起こすと、まだ少し体が気怠く感じた。




戸惑った桜は、そんな俺の姿に動揺しながらも、ベッドの脇にあるイスに座りなおした。



ギュッと握られた両の拳。



キスをしてしまったことに反省をしているはずなのに、


愛しくて、引き寄せたいという衝動がまた沸き上がる。




何も話そうとしない桜を見つめて、俺は口を開いた。



「昨日は……悪かった…本当に……」




やるせない。


自分のことなのに悔しさすら感じて、顔を歪ませていると、桜は、「いいんです」と小さな声で呟いた。






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