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第11章 風 章21第
「じゃあ桜ちゃんも来たし、私行くわよ」
再び気を利かせているんだか、幸がそんな事を言って桜が慌てている。
「今日はもう散々達也と話したから」
「そう…なんですか」
散々話したって……。
はぁ……と小さく溜め息をついた俺はようやく桜と幸の方に向き直る。
桜は行こうとする幸の方を向いていて、俺には背を向けていた。
「うん。このまま行けば、もう明日の朝には退院するって」
「はあ…」
線の細い体。
肩が少し脱力したのが分かった。
「じゃあ、また、お店でね」
そう言いながら、幸は俺に意味深に視線を送ってきた。
頑張んなさいよと言っているのが分かる。
目を反らして、そして、幸を眺めている桜の後ろ姿を眺める。
短くなった髪が揺れる。
幸がいなくなると、俺は背後から近付いて、桜の名を呼んだ。