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第11章 風 章21第
タバコに火を付けようとしている俺を見て、桜が再び慌てている。
「だから店長!タバコは───」
「桜!」
タバコに火がつきそうなる寸前。
聞こえてきた男の声に、俺の手が止まって、ライターの火が消えた。
「かずにぃっ…」
「──────…」
そして、桜がそう叫びながら振り返る。
何度も聞いたその名前に、俺は手元を見ながら目を見開いた。
ぽろ…と、咥えていたタバコが地面に落ちる。
でも、そんなこと全く気にならないまま、俺はゆっくりと顔を上げて、桜が“かずにぃ”と呼んだ男の事を眺めた。
「ずっと、話したいと思って探してたんだ…」
ニコニコと微笑む長身の男───…
「話…っ?」
背中しか見えないが、桜が動揺しているのは声で明らかだった。
「ずっと気にしてたんだ…」
優しく桜に話し掛ける男に、桜がえっ…と小さく声を上げている。
身なりも整っていて、あまりに純粋無垢そうなそいつのを見て、本当にこいつが桜の言っていた和明なのか、信じられなかった。