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第12章 みぼつ 章31第


愛しい───…



そんな気持ちがわき上がって、また引き寄せたくなるのを堪える。




そのまま頭に置いていた手を滑らせて、桜の頬に触れた。




今にも溢れそうな涙。



泣いたっていい。


そう伝えるつもりで俺は親指でゆっくりと桜の頬を撫でた。




「てんちょっ…」




言葉を詰まらせて、必死で流れそうになっている涙を堪えている。



こんな時までまだ桜は強がる。




「桜……」



「っ………」




「あのなぁ、泣きたい時は泣いた方がいいぞ」



そういうと、桜は唇を震わせた。





「お前は自分の感情を誤魔化しすぎなんだよ。素直になれ」



こいつは、いつも自分の感情に向き合わない。


見てるこっちにはバレバレだっつーのに。



「嬉しい時は笑って、悲しい時は泣いて、ムカつく時は怒って…まぁ俺みたいに人を殴ったりはしない方がいいと思うけど」



「…………」



「とにかく、そうした方が身体にいい」




黙ったまま何も言わない桜に俺は微笑む。


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