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第12章 みぼつ 章31第
「何書いてんだ?」
「………なにも…」
素っ気なく返されて、不満が募った。
さっきまで賑わっていた店内がしん…と静まり返っている。
桜は、顔を上げずに未だに水滴に指を滑らせている。
「─────…」
再びグッと溢れ出た気持ち。
それを堪えていると、樹と桜が楽しそうに話していた光景が甦った。
「今日来た、あの幼馴染み…」
「………樹、ですか?」
「あぁ」
返事をしながら、言いようもなく胸が疼く。
「結構いいやつっぽいじゃん」
「………まぁ…」
否定しない桜に堪え兼ねて、俺は桜に背を向けて締めの作業を始めた。
微かに自分の手が震えている。
もう堪えるのも限界が来ている。
一々の桜の反応に一喜一憂するのも疲れた。
そもそも、36でバツイチの俺が10も年の離れた桜にこんな想いをずっと抱えていることが異常なんだ。
頭では分かっていてもどうにもならない。
ならもういっそ…誰かと幸せになってくれれば……
別に俺は……桜の傍に誰がいようとも、桜が笑ってさえいれば…────
そうなれば諦めがつく…はず…だ。