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第19章 満不のへ人恋 章22第
「えとっ……あっ…」
「……緊張してんのか?」
「すみませっ…」
顔をくしゃとさせたそいつは、額の汗を拭う。
その手が微かに震えているのが分かった。
「店自体も気ままにやってんだ。面接も気ままでいい」
「は、はいっ……」
「それに、緊張するような相手じゃねぇよ、俺は」
バツイチの三十代半ばの、ただのおっさん、だ。
「ちょっと深呼吸しろって」
「は…いっ……」
まだ緊張が冷めないのか、ふぅ……と深呼吸を始めたそいつの健気な様子を見て、落としにくいな…と思った。
そして、再び履歴書を眺める。
“和田 葵(わだ あおい)” か……
また花…か。さらに落としにくい。
花の名前のやつに、悪いやつはいねぇ、というのが、実家が花屋である俺の持論だ。
「すみませんっ……少し落ち着きました……」
「……おぅ」
ハッとして顔を上げると、葵がはにかんだ。
要領は悪そうだが、小柄で愛嬌はある。一人前になるまでに時間はかかるかもしれないが、いいかもしれない。
何より、“桜と葵”ってのが、悪くねぇしな。
「えと…志望動機ですよねっ……」
「あ〜……そうそう」
自分で聞いておいて、聞いた事を忘れていた。
適当に返事をすると、葵は懸命にその小さな口を開いた。