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第19章 満不のへ人恋 章22第



「最初は…っ時給が良いなと思って…!」


「へぇ……?」



素直だな…。金…か。まぁ学生なら、時給が1番気になるんだろう。




「でも……今日店長にお会いしたら…っ…すごく素敵で…」


「………………」


「しかも優しいし……。ぜひ一緒に働かせてもらいたいなって…っ」



取り留めもない話し方。

ますます小学生か中学生に見えてきて、ゆるく笑う。



「そりゃどーも」


「っ……あとっ…あの私、極度の緊張しいなので…。それ治せたら…っ…」




語尾が窄まる。

それとともに俯いた葵を見て、胸が熱くなった。

なんつーか……多分、娘とか出来たらこんな気持ちなんだろう。想像でしかないが。




「……そんなもんどうにでもなるから、安心しろ」


「へ……?」


「サイヨーってことで、よろしく」



灰皿に置いたままだった、短くなったタバコをひと吸いした俺は、天井に向かって煙を吐く。


………あのワガママネコは、今頃この上で何をしてんだろうか。


帰りを待っているんだろうか……


天井をジッと見つめながら、そんなことを考えたあと、すぐにタバコをもみ消して葵に向き合う。



すると、口をぱくぱくさせて俺の事を見ていた。



「……大丈夫か…?」



心配になって声を掛けると、葵は突然立ち上がって、ありがとうございます!と笑顔で叫んだ。


桜も、素直で可愛げのある葵と働けばちょっとは変わるだろうか……


2人目のバイトが決まったのと同時に、俺はそんな淡い期待を抱いていた。
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