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第20章 輩後 章32第


「そんな雰囲気じゃ…なかったですよ…ね」


グサグサと、桜の言葉が胸に刺さって抜けない。

無自覚とは言え、ひどい仕打ちだ……。



「…………お前、ほんとタチ悪いな」



振り返ってため息混じりにそう言いながら俺はそばに脱ぎ捨てられている自分の上着を掴んだ。



後ろで、桜が、訳が分からないと言った様子で、「は?」と言っているが聞こえる。



「仕込み、はじめるぞ」



これ以上突っ込まれても辛い。

その隙を与えたくなくて俺はそんな時間でもないのに適当にそんなことを言った。



「…紅茶……飲みたい」

「紅茶…?」



話が移ったことに安堵しながら桜の方を振り向く。



「だって、まだ仕込み始めるのは早いでしょ」



鋭い。


やっぱ誤魔化しきれはしないのかもしれないことにバツが悪くなって、俺は頭をかきながら、まぁ…とぬるい返事をした。


そして、桜がしっかりと布団をかぶっているのを見て思わず目を細める。


「とりあえず、体起こせ…………。とにかく寝過ぎだ、お前」

「だ、だって……」

「だって、なんだよ」



理由があるならむしろ聞きたい。

それに、疲れているっていうならそんなに頑張らなくていいって言うだけの話だ。

だが、桜は何か悩んだような顔をしたあと、結局「起きますよ」とだけ意味深に言った。

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