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第20章 輩後 章32第


そして、葵の初出勤の日。


俺は緊張でガチガチになっている葵を呼んで桜に会わせた。



「桜、こいつが新しく入った葵。葵、こいつが桜、な。」



タバコに火をつけて、様子を見る。が、桜は突っ立っているだけで葵はプルプル震えている。


緊張しい、とは言っていたがあまりの様子に俺は、葵のそばに寄って肩に手を乗せた。



「おいおい、俺だけじゃなくこいつにまで緊張するのかよ」


「すみっません…っ…」



……なんだろうか、やはり、娘とかを持ったらこういう気持ちになるんだろうか…。




「落ち着いて、ほら深呼吸しろ」



そんなことを言いながら、あれこれと考える。

俺の子って言うのは……

つまり桜との子、だろうか……


まぁどっちの何が似ようと、葵のような子にはならないかもしれない。



「わ、和田、葵といいます、あのっ」


葵がようやく話したって言うのに、桜はそっけなく「よろしく」とだけ言って立ち去った。


………子どもの事なんて考えるのはまだまだ早かった。


何しろ、桜自身がまだこういう子どもっぽいところがある。


痺れを切らして桜、と呼び止めると、桜はそのまま立ち止まった。



「頑張って挨拶してやってるんだからもっと───」

「そんなに緊張してどうするの?」


俺の言葉を遮って、桜は葵に向き直る。

突然の強い口調に、隣にいる葵を眺める。


2人を会わせることは、楽しみだったのだが、あまり合わないのか───…



まずったかもしれない、と思い考えあぐねている間にも桜は止まらない。



「接客する気ある?」


「桜!そんな言い方ねぇだろ」



あまりの態度に、思わず桜を止めるように見つめた。
その脇で、葵が慌てて「あ、あの……!」と声を上げた。

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