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第20章 輩後 章32第


「葵、いじめられてねぇか?」


「あっ、ぜ、全然! 私がうまく出来なくてそれで…」



あわあわしてる葵の横で、桜は俺をチラと見て、また不機嫌な顔をしている。


これは……どう考えても俺に原因がありそうだ。


でも考えても理由が分からない。


桜は顔に出やすい。


だから、何を考えているのか全く分からねぇってことはないが、なんでそうなっているのかが、分からないことが多い。


あれこれ考えているうちに、開店の時間が迫る。


桜越しに葵が、あり得ないほど緊張しているのが見えて、俺は側へ行った。



「大丈夫だ、そのまま深呼吸しろ。別に死にゃしない。すぐ慣れる」



そういえば、桜も初日は覚束なかった。


今考えれば、あの時は桜もまだ初々しくて、あからさまにいっぱいいっぱいだった。


葵を宥めながら、そんなことを思い出して、口元が緩むのを抑えていると、隣から当の本人の大きなため息が聞こえてきて、俺はじっと桜を見た。


肩までの髪が靡いて、揃えられた前髪の下から覗き見るように見上げた。



「なんですか」


「何不機嫌になってんだよ」


「別になってない…です」


「なってるだろうが」



明らかに図星な様子を見せるが、ギュッと口をつぐんでいる。

これ以上は話す気がないようだ。



「まぁいい。なんだか知らねぇけど、客が来てもその態度続けるなよ」


閉店して、2人になったら聞き出せばいい。

俺はそんな甘い考えをしてそのまま店を開けた。
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