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第20章 輩後 章32第


今日は週末だから、遅くなればなるほど、人が増えていく。


ひっきりなしのオーダーに対応しながら、俺は額の汗を手の甲で拭う。


やっぱ、どう考えてももう1人雇ったのは正解だった。


もちろん葵はあわあわしていてまだ一人前とは言えないが、それでも筋は悪くない。


そんな中で、カランと扉のベルの音が鳴って、いらっしゃいと声を掛けると、見たくもねぇ顔に、思わずチッと舌を打った。


わざとらしく、俺にひらひらと手を振ったそいつは、いつものようにスーツを着ている。


そして、すぐにフロアを見渡して桜を見つけると、また不敵にニヤリと笑った。


奴の名前は確か北野 悠(きたの ゆう)。


数ヶ月前に桜をナンパしてきてからというもの、桜目当てにこの店に通ってきている。


身なりは悪くなく、年齢も桜ときっと同じくらいでとにかくムカつくやつだ。


今すぐにも追い出してやりたいが、桜も適当にあしらっているようだし、一応客だから黙認している。


流石に、あんな得体の知れないやつに桜が靡くことはないはずだ。


どう考えたって俺の方がマシだし、あんなやつに妬く価値もない。


そう思いながらも、チラチラと桜と北野の様子を見てしまう自分を情けない。


そんなことより初日の葵を気にかけてやる必要があるが、


心ここに在らずな状態になっている自分に気付いて、襟足を掻いていると、北野のオーダーを取った桜が近付いてきた。




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