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第20章 輩後 章32第


「おい、桜」と呼び止めると、桜は節目がちに俺を見た。


「……はい」


「まだ機嫌治ってねぇのかよ」



改めて聞くと、さらに桜は顔を歪ませる。


「別に機嫌悪くないけど」


「…………ふーん…」



なんだこの反応は……。

そんな機嫌悪く、機嫌悪くないって言われてもな……


まぁいい。


仕事中に聞くのは限界がある。



「お前さ…」


「何ですか」


「今日さ────」




泊まれよ、と言いかけたその瞬間。


店の奥でパリーーーーーン!!とガラスが割れる音が響いて、俺は音のする方を向いた。


あわあわと慌てる葵の足元にガラスが散らばる。


「す、すみませんっ…!!!!」


さらに、葵の大きな声が響いて、俺はカウンターから飛び出した。


まぁ、やるとは思ってたが。


少しは慣れてきたが、失敗したことで完全にパニックを起こしている葵をフォローする。



「すみませんね、うちの新入りが。お客さん、怪我してないです?」



笑ってそういうと、客は全然と顔の前で手をヒラヒラさせている。


特に怒っている様子もなくむしろ葵のことを心配している様子の客に少し安堵して、俺は箒を探す。



「私っ……ほんと、あのっ……ごめんなさいっ…ほんとに…ごめんなさいっ…」


ひたすらに謝る葵に、むしろ客が恐縮している。



「すぐ片付けますね〜」



まぁ大事にならなくて良かった。


あとで葵をどうフォローしようかと考えていると、葵は、俺が片付け出したことに慌てたのか、その場にしゃがみこんでカケラを拾った。



「私がやったので、私やりますっ…」


「あ、おい、お前そうやって素手で───」



忠告も虚しく、案の定葵の指から血が滴ったのを見て、俺は頭をかいた。
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