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第20章 輩後 章32第

「おいおい、それ以上動くな。いいからじっとしておけ」



さらにパニックになっている葵に、そう言って俺は救急箱を取って、葵の元に戻った。


散らばったグラスの破片に手を伸ばしてって光景はデジャヴだ。
付き合う前だが、桜もこんなことがあった。


確かあの時は、怪我しそうになるのを俺が寸前で止めた。


怪我はしなかったものの、色々と苦しんでた桜の表情は見ていられないものだったのを思い出す。


しかも俺はそのあとたまらずキスをして……。



「………っ…」



勝手に自身の黒歴史を思い出して、居た堪れなくなった俺は葵の指に絆創膏を貼りながら、苦笑いをした。



「ありがとうございます……」




涙目で葵はそういうと、もう片方の手で頭をかいた。



「ほんと私ドジで……っ…、迷惑かけてばっかでごめんなさい」


落ち込む葵のそばにいた客がまた軽く笑う。


「最初はそんなもんだって。ね、マスターも許してあげて」



許してあげても何も別に怒っちゃいけねぇんだが、な。


俺はフッと言いながら、葵の肩をトントンと叩いて、カウンターに戻った。


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