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第20章 輩後 章32第

「桜さんは…きっとそんなことなかったです…よね……っ」



………なんでここで桜に話を振るのか…。


嫌な予感がしながら、俺は桜の方を見ると、桜も作業を止めてこっちに向き直っている。


気を遣った言葉を掛けて欲しいものだが、まぁきっとそんなこと桜にはできない。



「そうだね。そんなにひどくなかった」




案の定の桜の言葉に「おい、桜」と声をかけて制止するが、桜の勢いが止まらない。



「正直、向いてないと思うからやめた方がいいんじゃない? その方が私も助かるし」


「さーーくーーら」


「いいんです…」



桜を制止する俺を今度は葵が制止すると、桜の不機嫌に拍車が掛かったのが分かった。



「本当のことだから……」



弱った声の葵に、俺はため息をついて立ち上がった。


そして、カウンターの中に入って、ヤカンに水を入れ、コンロで火をかける。


桜は、葵も気に入らないし、俺の何かに腹を立てている。


葵は俺の言葉も聞かずどんどんネガティブになっていく。


バカバカしい。足りない言葉の中で、色々とめんどくさくなって一旦落ち着かせるべく、俺は紅茶を入れた。



「店長………桜さんの言う通り、私がいたら迷惑なので私……」


「指は」



タバコに火をつけながら葵にそう言って、手を伸ばす。


とりあえず、一旦話を逸らすのが目的でそういうと、葵は「指……?」と言いながら首を傾けた。



「あぁ、さっき怪我したところ」

「………もう痛くないです」

「見せてみろ」



葵が手を伸ばしたので、俺はその手を掴んだ。

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