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第20章 輩後 章32第
桜と葵。
タイプが違う2人ではあるが……
俺の言うことを聴かない、という点では似ているかもしれない。
葵の指に貼った絆創膏には言うほど血が滲んでいなかった。
「大丈夫そうだな、よかった」
「……すみません…」
そればかりの葵に、小さくため息をつく。
「あのなぁ。桜も偉そうにあんなこと言ってっけど、最初はゴキブリ出ただけで大騒ぎで大泣きしてたんだぞ」
桜の初日。
遊びに来た、知り合いのクラブのオーナーである幸に唆されて、まんまと桜のギャップにハマったあの出来事を、俺は忘れない。
だが桜は覚えていないのか、「はぁ??」と声を上げている。
その様子に、思わず軽く笑った。
当の本人は、あの日に俺がまんまとやられてたなんてこと、夢にも思っちゃいねぇんだろうが。
「とにかく最初はそんなもんだ。」
んん…と納得していない風の葵に、反論する隙を与えたくなくて、俺はそのまま紅茶を入れたマグカップを差し出した。
「初日、お疲れさん」
「店長………」
「これからもよろしく」
そっと、葵がマグカップに手を伸ばす。
その様子にホッとしたのも束の間、再びグラスの割れる大きな音が響く。
驚きながら、音のした方を見ると、桜が自分の足元に広がるグラスの破片を眺めていた。