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第20章 輩後 章32第
じっとしていた桜が徐々に体を震わせる。
そして、ゆっくり顔を上げると、俺のことを見つめてきた。
怒っているような、悲しいような、そんな表情。
分かったのは、ガラスを落としたのはわざとだってことだった。
「桜さんっ…!? だ、大丈夫──」
「──何やってんだ、お前」
さすがに呆れて、俺は葵の言葉を遮る。
何かが気に入らなくて不機嫌なのはいい。
だが、こんな風に自分勝手に気を引くのはさすがに子どもっぽすぎるだろ……。
しかもグラスを割るなんて、桜自身だって怪我をするかもしれない。
さすがに見過ごせ無くて、思わず言葉が強くなる。
桜は相変わらずぷるぷると震えたまま顔を赤くしている。
「手伝いますよ!」
「いい」
椅子から立ち上がった葵を、止める。
「自分で片付けておけよ」
そう桜にいうと、桜はギュッと唇を噛んだ。
「帰ります」
「は?」
「その子のせいで、疲れました」
震える声で桜はそういうと、荷物を掴んで店を出ようとしている。
待て、と言いかけたところで、桜の目いっぱいに涙が溜まっていることに気付いて、ハッとしている隙に、桜は店から飛び出してしまった。