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第21章 現実


葵……か。


まさかとは思ったが……。


幸の言う通り、桜は普段言葉にしないが、とんでもないことを考えがち、だ。


葵なんて、幸と同じくらい有り得ないけどな……。



呆れていると、桜は「でも……」と言葉を続けた。




「私の方が絶対っ……店長のこと好きだから……っ」




思わず、顔が緩みそうになるのを堪える。



いや、こいつは当たり前のことを言っているにすぎない。



てか、この言い方からすると、俺が葵をってより葵が俺をっていうのを疑っているのか?


すごいな…と感心するのと同時に恐ろしくなる。


どこまで何を誤解すればそんな考えになるのか。


そもそも、こんなオヤジでもいいと言って付き合う桜の方が珍しいっつーのに。


否定するのもバカバカしいとすら感じていると、桜はきっと俺のことを睨んだ。



「大好きなのっ………!」


「……っ…」


「すっごく…すっごく好きっだから……!!言っとくけど……っ店長のことこんなに好きなのっ……私だけだから」




本当になんなんだこいつ。


普段そんなこと絶対言わないくせに、好き好き叫びやがって。


そして、そのあと桜はその細くて長い手を伸ばして、俺のシャツのボタンを外そうとしている。


普段から、こう素直なら、な。


いや、そうじゃないからたまにこうなった時に、まんまと俺がやられてるっていうのもあるが……。


想いをぶつけられるのは悪い気はしない、が、


ここまで不安にさせているっていうのもまた事実だと思うと、複雑だ。



「桜……」



そのまま抵抗することなく、桜を呼ぶと、桜は潤んだ目で俺のことを見てきた。




「俺がいつ若いのがいいって言ったんだよ」


「……それ………は…」


「あと……お前は……かわいい、俺の中では世界一な」



そっちがありのままなら、こっちもありのまま。


反応を気にしていると、嬉しそうに桜の顔が赤くなったのが分かった。



………ホントたまんねぇ…


なんなんだ、このかわいい生き物は。
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