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第21章 現実
当たり前のことを言っただけで、こんなに喜ぶなら普段からもっと伝えてもいいのかもしれない。
おぼつかない桜の仕草が焦ったくて、俺は自分でボタンを外していった。
流されるのは良くないと思ったが、この想いが伝わってねぇって言うんだったら、伝えたい。
この日のことを桜が覚えてなかったとしても、別に何度だって伝えてやる。
と、まぁそんなこと思っておいて、結局は桜がかわいすぎて我慢できなくなったってだけ、なんだが……
勢いよくシャツを脱いだ俺は、逆に桜のワイシャツのボタンに手をかけた。
「お前が何をそんなに不安がってるんだか、全く分かんねぇけど……。ま、それは……お互い様…なのかもな」
そのまま桜のシャツを脱がせる。
「俺だって色々と気が気じゃねぇよ……」
そもそも長らく気に揉んでたのは俺のはずだ。
最近になって、色々とあれこれ考え始めた桜にとやかく言われるのもおかしな話だ。
「……店長……」
「お前さ……いい加減その呼び方やめろよ」
「え………?」
「達也って呼べって」
堪らず桜の耳たぶを甘噛みすると、小さく声を漏らして微かに震えたのが分かった。
「何回言ったら分かるんだよ」
「分かってるけど……っ…呼び慣れなくて」
分かってるっていうのも怪しい。