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第22章 主い飼 章42第
「洗いますね」と言う桜を制止する。
「いや、いい、俺がやる」
「ちょっとは私にもやらせてください」
強く見つめられて、俺は言葉を返すことなく見つめ返した。
「マグカップくらい洗えるし。そういうのの積み重ねで負担になりたくないです」
まぁ、そりゃそれくらい出来るとは思ってるけど、な。
「別に負担じゃねぇよ」
「はいはい」
俺を軽くいなしながら、マグカップを掴んで流し向かう桜の後に続く。
「俺がやりたくてやってんだ。」
結局俺は、桜に頼られたいとかそんなことを考えている。
何かしてやりたいっていうのも、そういう下心があるのかもしれない。
「分かりましたって」
本当に分かっているのか。
少し話し合ったお蔭か、ちょっと強気になってる桜が愛しくてフッと笑う。
「それに世話するのは飼い主の仕事だろ?」
「っ…人をペットみたいに…───」
そう言いかけて言葉を止める桜の顔を、流しの脇から覗き込む。
「ペットとは思っちゃいねぇけど……」
たまに猫に見えるっていうのは飲み込む。
「まぁでもあんまり甘やかすのもよくねぇのかもな」
俺の言葉にムッとした表情で上目遣いをしてる桜にあいも変わらず胸をくすぐられる。
「そういう言い方するなら…一生、世話してください…よ」
照れ隠しなのか、顔をほんのり赤くさせながら、なんてことないって様子を演じてマグカップを洗っている桜に、くすぐられる程度では済まないほど胸が高鳴る。
きっと今、俺はだらしなく口元が緩んでいるに違いない。
「そのつもりだ、安心しろ」
「っ…………」
俺の言葉に、ピクりと桜が体を震わせる。
そして、マグカップを素早く洗い終えた桜は、急に振り返ってそのまま俺に抱きついてきた。