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第23章 さ尊 章52第
「そんなの、お客さんに聞きなさいよ。………ねぇ?」
そう言って、側に座っていた常連の客に声を掛けると、客は楽しそうに笑った。
「マスターも、桜ちゃんも最近幸せそうで何よりだよ」
「……そ、んなに私…」
分かりやすいのかな…?っていう分かりやすい表情をした桜は今更恥ずかしがるようにして口元を手で覆う。
その様子を目を細めて見つめていると、客はまた優しく桜に微笑んだ。
「桜ちゃんも、やっとマスターの良さに気付いたみたいだしねぇ」
「………………」
「あんないい男が、長い間悶々としてるのに、桜ちゃんは気付く様子もないし、見ていて本当にじれったくてねぇ。あんまりくっつかないから、おじさんあと少しで後押しするところだったよ」
「っ……!!」
客の話す内容に俺は目を見開く。
お、おいおい……勘弁してくれっ……何を勝手に暴露しようとしてんだ…っ
一方の桜は、興味深そうにお客の方へ少し身を乗り出している。
「あの……どんな風に」
「─────お客さん、もう大丈夫ですからっ……」
いい加減にしてくれ。
これ以上、過去の自分の情けない姿をバラされるのはたまったもんじゃない。
そもそも、そんなことが客にもバレていたこと自体今知って、恥ずかしいっつーのに。
俺の様子を見て笑った客は桜を手招いて、何やら耳打ちしている。
変なこと吹き込んでねぇよなっ…!?
その後、目を見開いた桜は、はい、と返事をして、みるみると顔を赤くさせていった。
何言われたんだ……。
内容が気になるが、今この場で聞いても自爆する気しかしない。
対応に困って、チラと桜のことを見ると、タイミング良く桜も赤らんだ顔でこっちを見てきたので、慌てて視線を逸らした。
「い…いから早くこれ運んでくれ」
そう言って葵に再びお酒を差し出す。
俺はバカなのか……。
こう言うガキみたいな行動をするから、分かりやすいだなんだと言われるんだ。
軽く項垂れていると、桜も分かりやすく逃げるようにして洗い場の方へ足早に去っていた。