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第23章 さ尊 章52第
「いつもの、よろしくね」
幸はそう注文してわざとらしく微笑む。
俺は返事をせずに兄貴の分と合わせて酒を作り始めた。
「あの様子だと、桜ちゃんとはちゃんと話せたみたいね」
「………まぁ」
昨夜話したことはまるっきり記憶の彼方に行ってたけどな。
「達也って、そんなに桜ちゃんに惚れてたんだな」
「っ……うるせぇよ!」
「そんなに熱いタイプと思ってなかったけど…年甲斐もなく結構入れ込んでんだな! まぁ確かに桜ちゃんかわいいしな!」
鈍感な兄貴はデリカシーもなくて、いつも無垢な刃を俺に向けてぶん回してくる。
しばらくして客に捕まってた葵が戻ると、幸はまた優しく微笑んで、「あなたが葵ちゃんね」と声を掛けた。
「あ、は、はいっ……和田葵です…!」
「かぁわい〜〜俺、こいつの兄貴の拓也、よろしくね」
ヘラヘラと自己紹介した兄貴の言葉に葵は、へぇと目を見開いた後頭を下げる。
「私は幸。radiceってクラブを経営してるの。そんなに遠くないから遊びに来てね」
「そうなんですね! よろしくお願いします」
緊張しいな葵が普通に出来ているのを見ると、やはり幸には人を安心させる力があると言うのは認めざるを得ない。
まぁ少なくとも俺はバカにされてばっかで安心なんかしたことないが。
案の定幸が「それにしても」と話し出したので嫌な予感がした。
「2日目の葵ちゃんが分かるほど、あなたたち店でいちゃついてたの?」
「バカ言うな! んなわけねぇだろうが」
思わず強く言いながら、俺は恐る恐る葵の表情を伺った。