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第25章 ち持け掛 章72第




「まぁ実家手伝ってぶっ倒れた俺に言われたかねぇだろうけど」



俺の自虐ネタに、桜もフッと笑ったのが分かった。


思い出すだけで恥ずかしくなる出来事だが、あれがなけりゃ今の桜との関係もない。


あの時はいっぱいいっぱいでこういう日が来るとは夢にも思っちゃいなかったが……



不意に、熱く胸から気持ちが込み上げて、俺はスマホを持っていない方の手のひらをぎゅっと握った。




「桜」



「はい」



「辛くなったら言えよ。出来ることがあれば何でもするから」




いつだって、俺は桜のために何ができるかと、そればかりを考えている、そんな腑抜けた中年オヤジだ。



間を置いて、桜が「はい」と答える。



少しだけ震えた声。



それが妙に愛おしくて、俺は唇を噛んだ。



きっと、喜んでいるのを必死でバレないように取り繕うようなそんな顔をしてるんだろう。



ついに顔を見なくても心が読めるようになってきた。



握っていた拳を解いた俺は、そのまま頭を抱える。



しばらく沈黙が流れ、俺は堪らず息を吸い込む。



「…………じゃあ」



俺の言葉のあと、また間を置いた桜は「では」と元気なく言うと、そのまま電話を切った。




「はぁぁーーっ」



深くため息をついてベッドの上に仰向けに寝転がる。




「寂しそうな声出すなよ……っ」



ぽつりと呟きながら、俺は再び深くため息を吐いた。




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