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第25章 ち持け掛 章72第





兄貴が突然家に押し掛けて来たのは、翌朝のことだった。



かなり焦った様子なんで、訝しんでいると「頼む!!!」と叫んで大きな紙袋を俺に渡して来た。



「……………なんだこれ」



あまりにも説明が足りなすぎる。


欠伸をしながらとりあえず中に入るように言うが、兄貴はそれを拒んだ。



「ゆっくりしてる暇はねぇんだよ。もうすぐ母さんがうちに来るから」


「は?」



当たり前だが、兄貴にとっての母親は俺にとっても母親だ。


まぁ口うるさくはあるが、別にそんなに怯えるような母親ってわけじゃねぇ。




「もう少し分かるように話せよ」


「だから、母さんがうちに来るんだよ!」


「なんで」


「知らねぇよ!!!『いい歳して結婚もしてないどころか、彼女もいない、かつだらしないんだからたまには掃除に行ってあげる』とか急に電話で言い出したんだよ!!」



はぁ、と気の抜けた返事を返す。


確かに、はるか昔、実家でまだ一緒に住んでいた時から兄貴の部屋は恐ろしく汚かった。


ズボラ。それでいて能天気のお気楽野郎で……


おふくろも、俺なんかよりも兄貴の方がよっぽど心配なんだろう。




「良かったじゃねぇかよ。どうせ足の踏み場もねぇんだろ」


「………ふ、踏み場くらいはある!」



そんなことで意地を張られても困る。


呆れ気味に息を吐くと、兄貴は差し出している袋をさらに俺の方に突き出した。

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