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第25章 ち持け掛 章72第



こう説明してしまえば簡単に聞こえるかもしれないが、当時はがむしゃらで結構大変だったのを思い出す。


それに加えて……


──────────── 私より先に死なないで欲しい



この前の桜の言葉が脳内で再生される。



「…あいつが望むなら一生そばにいて守るし、逆に他にいい奴が現れて、俺はもういらないってあいつが言うなら、俺はすぐに身を引く。…………ありきたりだが、俺は本気であいつの幸せが第一だと思ってる。だから、あいつを泣かす、なんてそんなこと有り得ねぇ」


「………………っ………」


「つまり、お前が出る幕はねぇーってことだ。………馬鹿なこと言ってないで黙って仕事しろ」



ようやく話し終えてガムを口の中に放り込む。


らしくもなく、饒舌になってしまったのが何だか恥ずかしい。


そして、気を逸らすようにスマホを入れたポケットに意識を集中させるが、メッセージが来たような通知はない。


店を締めるための作業に取り掛かろうとすると、再びカウンターをバン!と強く叩くような音が響いた。



まだ喚きたりねぇのか…


桜を慕っているのはいいことだし、最近仲良さそうなのも安心していたが、俺に対しての信用が薄すぎねぇか……


カウンターに手をついて顔を伏せながらプルプル震えている葵に、これ以上何を言おうかと考えあぐねえていると、途端に葵がキラキラした目をして顔を上げたので、思わず「うわぁ」と間抜けな声を上げてしまった。









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