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第26章 惑疑 章82第



居ても立っても居られなくなった昼過ぎ。


外に出た俺は、気持ちのいい空気を体いっぱいに吸い込んだ。


心底タバコが吸いたいことに変わりはないが、前より空気が美味しくなったような気がしなくもない。



店の前の花壇の前にしゃがみ込んだ俺は、それぞれの植物の顔色を伺う。



割とまめに手入れをしているお蔭で、我ながら綺麗に育っていると思う。



「………悪くねぇな」



独り言を言ってる自分に気が付いた俺はハッとして固まる。


実家の庭に咲き誇る花たちに親父がよく話しかけていたのを思い出す。


家業として生花店をやってるっていうのに、家でも楽しそうに花の世話をして、そして言葉までかけてる親父を俺は『なにやってんだか』と呆れていた。


なのに、何十年も経った今同じようなことをしてる自分。


もちろん、生花店をやってるわけじゃないが、それでも似たようなことをしてることに何となく嫌気が差して口を噤む。



蘇る思い出。


おふくろは、そんな親父の姿を見て幸せそうな顔をして見ていたが……


今桜がこんな俺を見たら、「らしくない」と言って、昔の俺と同じように呆れるだろうなんてことを考えて、フッと笑っていると、突然背後から足音がした。



「あ………て、んちょう」



「ん……? あ、お、おう」




久々の……つっても4日ぶりの桜のことに驚いて目を見開く。


そして慌てて立ち上がって俺は手についた土を払った。


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