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第26章 惑疑 章82第
店の賑わいがひと段落した頃のことだった。
落ち着いてきて余裕ができると、仕事が終わった後のことばかりに意識がいって、集中できなくない。
が、そんなタイミングで、俺の気分をいい意味でも悪い意味でも変えるやつが現れた。
短髪黒髪のニヤニヤした若い男。
思わずはぁ…とため息を吐くと、桜も同じようにため息をついていた。
確か…北野なんちゃらとかいう名前だ。
凝りもせず桜にちょっかいを出してくる、本当に癪に触る男だ。
「やっほー、桜」
案の定ヘラヘラと挨拶をした北野は、その後わざとらしく、目を見開く。
「……じゃなくてスミ────」
「───── いらっしゃいませーー!!!」
突然に北野の言葉を遮るように大きな声を出した桜に俺は眉を寄せる。
明らかに不自然。
さらには、北野自身もそんな桜の様子を楽しむようにまたニヤリと笑った。
そして、俺に挑発的な視線を投げるとそのままカウンターに座った。
…‥なんなんだほんと。
「ここに座んのか」
「別に自由席でしょ?」
ふふと意味ありげに笑う北野にイラだとした俺は、視線を外す。
なーにが自由席でしょ、だ。
いつも俺からは見えるか見えないかっていう奥の席で桜のちょっかい出してんだろうが。
心の中で悪態をつきながら、「勝手にしろ」と返して、そのまま仕事を続けた。