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第26章 惑疑 章82第


目の前で意味ありげに笑いながら酒を飲む北野は、正直気味が悪い。


桜と違って腹の底が見えねぇからイライラして仕方がない。


禁煙中で欲求不満なときに一番会うべき人間じゃない。


とはいえ客であることに変わりないし、惑わされるのも癪だから普通に手を動かすように努める。


が、さらに気になるのが……


桜も妙にソワソワしてるってことだ。


これが、開店前の俺とのやりとりでそうなっているつーなら、かわいいもんだが、桜が落ち着かなくなったのは明らかに北野が来てからだ。



「ねぇー! 桜ーー!」



少し空き出した頃、北野がいつものように桜に絡む。


当の桜もいつものように適当に聞こえないフリをしていなしていたが……


「あれ? 聞こえてない? あ、桜じゃなくてスミ────」



「─────── 呼びましたか!!!!」



慌てて北野の前に桜が現れる。


北野は何を言いかけた……?


スミ……?


つーか、桜はやっぱ今日明らかにおかしい。


満足そうにしている北野の腕を桜が掴み、顔を近付けている。


その動作に思わず俺は動きを止めた。


ごにゃごにゃと何かを話しているが、良く聞こえない。とりあえず、桜が必死なのは見てて分かる。


北野なんかに、慌てている桜の様子を見て、途端に俺の胸の中で言いようのないモヤが広がるのを感じた。



話が終わったのか、桜がようやく北野の腕を離す。


が……


次の瞬間、北野が馴れ馴れしく桜の腰に腕を回して引き付けたので俺は思わず目を見開いた。



「なっ……ちょっ……いい加減にして…っ」


「桜、一緒に飲もう」



明らかに俺に聞かせようとしている、わざとらしい声。



「っ……なんであんたと飲まないといけないのっ…」



桜もいつものようにあしらえばいいのに、変に慌てているのが気になった。



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