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第26章 惑疑 章82第
小さく息を漏らして、いきみを逃す。
「あのなぁ」と静かに声を出しながら、イライラが募ってとにかくタバコが吸いたいと思った。
「これ以上、うちの従業員にちょっかい出すと、本当に出禁にするぞ」
明らかな挑発にあんまり怒鳴り上げたくはない。
少しでも余裕を見せたくてやや冗談混じりなことを言うように努めたが目だけはキツく北野を睨みつけた。
「それは困るなぁ」
「っ………悠!」
俺とのやりとりを遮った桜はそのまま北野を引っ張って少し離れた場所に行ってしまった。
「桜ったら、強引だなぁ」
わざとらしい大きい声を上げる北野に桜はまた慌てると、さらに北野に顔を近付けて何かを話している。
何か弱みを握られているとはいえ、馴れ馴れしく男の名前を呼んで、コソコソと話す必要なんかあるだろうか。
助けてやった方がいいのか?とも思うが、そもそも桜自身がバツが悪そうにしているからどうにも動きづらい。
途端に、桜のことを“分かった気になっていた”ことに気付かされる。
そうなると……
絶対に奪われることなんかねぇだろと思ってた北野も、途端にめちゃくちゃあるんじゃねぇかって気になってきて……
桜の肩越しに、北野と目が合う。
フッと勝ち誇ったように北野は笑うと、また俺に見せつけるように桜の腰を掴んで引き寄せた。