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第26章 惑疑 章82第


………別に喚こうとは思わない。それに、本当に嫌なら桜だって拒絶するし、困ってるなら俺を頼るだろ。


そうしないなら、それは桜の意思な訳で、桜がしたいように出来れば俺は─────…



「…………っ…………」



ふと、北野に何かを囁かれた桜が顔を紅くするのを見て、俺はドカンときつい一発をお見舞いされたようなそんな衝撃を受けた。



……なんだよその…とびきりの女の顔…



まじだってことなのか…?


何を言われたらあんな顔になるんだよ。



「………ちっ…」




思わず大人気なく小さく舌を打っている間にカランと扉の音が鳴る。


それはようやく北野が帰ったことを表していて……


扉をぼんやりと眺めている桜に葵が駆け寄って何かを話している。



アホらしい。



心底腹が立つし、タバコが吸いたい。



視線をずらすとカウンターに座る別の客の空になったガラスが目に入った。



「…………お客さん、おかわりいりますか」


「ん…あ、お願い」



邪念を取り払うように酒を作る。


閉店したら、聞き出せばいい。


北野に話せて、俺に話せないことなんてないはずだ。


そんなことを思いながら、俺はグラスに酒を注ぎそっと客の前に出した。




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