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第26章 惑疑 章82第



閉店後。


作業しながらも何故かソワソワしている桜を見ながらため息をつく。



本当に分かりやすい。


だからこそ、なんでも分かっている気になっていたが…



「桜」



名前を呼びながら、洗ったグラスを掴む。


視界の端でビクッと体を震わせた桜は弱々しく「はい」と言いながら、こちらを向いた。


ため息を吐くようにグラスに、はぁと息を吹きかける。


キツくは言いたくない。


が、正直イライラしてて自制できるか分からない。



「あのな………今日の、あの、気味の悪い男のことだが」



「はい…」


やっぱりその話かって顔をしてる桜をグラスを拭きながらチラと見る。



「別に誰とどう過ごそうと、お前の勝手だし、口出しするつもりはねぇけど」



「……………」



「隙を見せるような事はしない方がいい」




曖昧な言葉。


でもこれだけで伝わってくれ、という気持ちもある。




「別にそんな事はしてなくて…っ……今日は悠が、適当なこと言って───」



凝りもせず馴れ馴れしく「悠」だとか呼んでいる桜にカチンと来てキツく桜を見つめる。



「─── お前はその『悠』に、何の弱みを握られてんだ」



「っ…………」


「困ってんなら俺がどうにかしてやる。あんな奴の言いなりになんかなるな」



黙り込む桜を俺は取り逃すまいと視線を外さず見つめる。


そのまま桜は唇を払わせると俯きながら首を横に振った。

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