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第26章 惑疑 章82第
「別に………隙も見せてないし…弱みも握られてない」
「なら…急にあの気味の悪いやつと仲良くしたくなったってことか」
そんなわけねぇだろ。
………いや…そんなわけ、ねぇ、よ…な…?
「店長には……関係ないです」
俯いたままの桜の一言が胸を貫く。
関係ない、か。
付き合う前、散々桜にそうやって言われて跳ね除けられたことを思い出す。
これは想像以上にやばい打撃だ。
気の利いた言葉なんか一言も出ない。
思ったよりもこの関係は儚いのかもしれない。
「……あのぉ…」
どれくらい沈黙が続いたのかは分からないが、こんな中で葵がか細い声を出したので俺はハッとして扉の前にいる葵を見た。
「どうした」
「すみませんが…私、終電なので……」
ん……も、もうそんな時間、か…。
葵には悪いことをしてしまったと思い、「悪いな」と言いかけたところで桜が突然「待って」と声を上げた。
「い……一緒に帰る約束してた、よね」
「へ?」
葵の言葉に合わせるように俺も心の中で「は?」と声を上げる。
いや、今日はうちに泊まるって話を────
「そうでしたね!」
明らかに急に話を合わせた葵に俺はただ目を細める。
「ごめん、すぐ荷物持ってくるから」
逃げるように裏に入った桜はカバンを掴むとそのまま葵の元に駆け寄る。
………おい、まじかよ。
「っ……桜!」
反射的に桜の手首を掴むが、桜はこちらを見ようともせずに力強く俺を振り払う。
「葵の……終電があるので」
「───────…っ」
「…………お疲れ様です」