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第26章 惑疑 章82第
扉のベルがカランと虚しく店内に響く。
デジャヴってやつだ。
付き合う前、声を掛けても一向に心を開かなかった桜は俺を振り払っていつも店を飛び出して行った。
「………また……か…よ」
泊まるって言ったじゃねぇかよとか、そんな事よりも読めない桜が怖くて仕方がない。
脱力するようにカウンターに腰掛けると、俺はテーブルにもたれながら天井を見上げた。
桜は、まだ若い。
こんなオヤジに固執する必要も理由もない。
シャツの胸ポケットを叩くが、そこには欲しているタバコではなくガムが入っている。
「ったく……っ」
もう禁煙も別に頑張る必要ねぇよな。
部屋に戻ったってもう捨てたから残ってない。
買いに行く…か……?
そんなことを一生懸命考えている間に頭の中で開店前の桜の紅らんだ顔が浮かんだ。
───────────── 久々に会えたから…近くに…いたい
「っ…………」
あれが嘘だったとは思えない。
が、
北野と桜のやりとりからして、昨日北野とどっかで会って飲んでたのは本当なんだろう。
訳が分かんねぇ。
片手で頭をワシワシと掻いた俺は、一人で盛大にため息を吐くとタバコを買いに出ることなく上への自分の家へと上がった。