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bloʇbnilᙠ
第26章 惑疑 章82第
ズカズカと歩みを進める。
こんな日に限ってやけに天気が良くて腹が立ってくる。
しばらくして、足を止めた俺は、そのままゆっくりと視線を足下から上へと上げた。
久々の桜のアパート。
来るのはだいぶ久しぶりだ。
カーテンは空いていて電気が付いている。
いる─────
覚悟はしたはずなのに、何故かそれだけでドドドドっと心臓が暴れるのを感じた。
ポケットに手を入れて、中に入っているスマホをぎゅっと握る。
そして、それを取り出すと俺は桜へと電話を掛けながら、窓を見上げた。
RRRRRと着信音が続く。
出ないだろうか、と思った矢先に、音が途絶えて静かになった。
「………はい」
「……あぁ、俺だ」
妙な空気。それがやはり心地悪い。
「どうかしましたか」
どうかしましたか、じゃねぇだろとキレそうになるのを堪える。
「いや…昨日話の途中だっただろ」
「………そう、ですね」
桜だって分かってないはずがない。
「次お前がこっち来るまでまたしばらくあるし、それまでこんな状態っていうのも気持ち悪りぃだろ」
「それは……まぁ」
困っているのが話しぶりから分かるが、それはお互い様だ。
何でもかんでも包み隠さず話せよ、とは言わねぇけど隠せねぇなら隠すなとは思う。
「お前がいいなら、今から……お前んちに寄ろうかと思ってんだが」
「えっ……う、うちですか…」
何をそんなに戸惑っているのか。
明らかに慌てている桜の声音に俺は片眉を上げ、「あぁ」と返事をした。