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第5章 ナンパの女


夜なのに、崩れることなくしっかりした化粧。


スーツもくたびれることなく決まっている。


そして長い髪を耳に掛けた時に控えめに塗られたネイルが目に入った。





「緊張しますよ…。マスターいい男だもん」



「……そんなことないですよ」


「ありますって…! マスター目当ての子多いんですよ」



茶化しているのか何なのか、いずれにしろ少し面倒だと感じて、俺はいやぁ……と返事を濁した。



「私、なごみって言います」




突然名乗ったその女…なごみは、カバンから名刺ケースを出して、俺に渡した。




「…はあ……」




その名刺を掴んで、眺める。



それと同時に、桜に名刺を渡していた男の顔を思い出して、何とも言えない気持ちになった。





「マスターは?」



「え?」




我に返って顔を上げると、なごみはジッと俺のことを見つめていた。




「名前……」



「あぁー…達也…です」



そう返事をすると、なごみはハニカミながら、達也さん…と呟いた。


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