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第6章 子迷 章6第
植物にとって、雨は恵みだ。
乾いていた土に水が浸透して、喜んでいるような、そんな風に見えて少しホッとした。
そして、この前植えたリナリアに目を向ける。
雨が落ちるたびに、その細い葉が揺れる。
他の植物は嬉しそうなのに、何故かリナリアだけ泣いているように見えて、複雑な気持ちになった。
「……倒れんなよ…」
そう声を掛けて、俺はリナリアが強い雨にやられないように根元の土を軽く固めた。
中年のオヤジが花に話し掛けてるとか……やべぇよな。
「店長……」
雨音の中、自嘲気味に笑ってると、聞こえてきた声に俺はハッとして立ち上がって振り返った。
「──────」
そこには
雨の中、傘も差さずに立ち尽す、桜の姿があった。
「桜…お前っ……!」
あまりに驚きすぎて、思わず声に動揺が洩れる。
けど、桜は俯いたまま顔を上げようとしなかった。