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第6章 子迷 章6第



「桜…?」




振り返って、様子を伺う。



でも桜は俯いたままで、何も言わない。



床に落ちていく水滴を目で追ったあと、再び桜を見つめた。




「タオル……持ってきてやるから」




そういって、再び奥に行こうとするが、桜は一向に離してくれない。



その仕草に、困りながらも胸を高鳴らしている自分がいた。




「……っ……………」




バカかっ……こんな時に…




「……おい、桜?」



再びそう声を掛けると、桜はゆっくりと顔を上げて俺のことを見つめた。




「────……」




瞳から、止めどなく涙が溢れ出る。






「私……」




苦しそうに、そう言葉を発した桜は、そのままボロボロと泣きながら、唇を震わせている。




その姿に…どうしようもなく胸が締め付けられた。




「いいから」



そう言いながら、体から何かがわき上がる。





「話さなくていい。とりあえず落ち着け」



これまで、何も話さない桜をもどかしく思っていたのに、あまりにも辛そうなその様子を見てそんなことを言っていた。





「店長……」





依然として唇を震わせている桜を見て、俺は唇を噛み締めた。




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