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第6章 子迷 章6第



じっと、マグカップを見たままの桜の横顔を眺める。




「お前…よくそんなこと、誰にも言わないで抱えてたな」



こんな話を、そのひ弱そうな体の中に溜め込んでたのかと思うと、苦しくなった。



「言えないですよ」



まぁ…そうかもしれない。



言いたくても、内容が内容なだけに抱え込むことしか出来なかったのも…何となく分かった。




「辛そうだとは思ってたけど、そこまでとは思わなかったわ」




不倫してるのか、とかそれくらいのことしか考えてなかった。



実際、不倫であることに変わりはないのかもしれないが、それよりもずっと重いものを、桜は一人で抱えていた訳だ。



たまに気を紛らしたり……嫌な事を一瞬だけでも忘れさせることができてるんだったらそれでいいと思ってたけど、そんなんじゃ…全然救えてなかったんだな。



知る術がなかったとしても、今までの自分が不甲斐なくて、嫌になる。



すると桜はうつろな目をした。




「私、もう自分が……誰なのか……」



桜は、すっかり伸びた自分の長い髪を一束掴んで眺めた。




「私はもう……私じゃないんです」




その姿を見て、言いようもない怒りがふつふつと湧いた。



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