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第6章 子迷 章6第


ふわふわとした視線。



まだ、俺の言葉がちゃんと飲み込めていないのが分かる。





──────────私、もう自分が……誰なのか……


──────────私はもう………私じゃないんです





「桜」



真剣に、俺は桜の事を見つめた。





「お前は、ちゃんと『桜』だよ」




当たり前のことを、当たり前に伝えたら、桜は少し目を見開いて、ふわふわしていた視線を強くさせた。





「俺はお前の姉貴に会ったこともないし、しらねぇし。だから、俺にとってお前は『桜』でしかない」




てか、俺はずっと……




「薫じゃねぇよ」






お前のことしか見てない。



『放っとけない』という想いが、いつの間にか『守りたい』に変わっている。



親父役を買って出たくせに、なりきれねぇし…。



俺も俺で情けねぇけど……




正しいことは伝えたい。



椅子から立ち上がった俺は、桜を見下ろして、再びタオル越しに桜の頭に手を乗せた。


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