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あの星に届かなくても
第2章 いびつな日常
「ああ……また溜まってる」
一日に何人ものユーザーからメッセージが送られてくるため、放っておくと新着トークリストは数十件に及ぶ。画面をスクロールしてリストをチェックすると、二十人くらいからメッセージが届いていた。数日前からやりとりしている者もいれば、今日初めて声をかけてきた者もいる。
リスト左側にはそれぞれのプロフィール画像が表示されている。しっかり自身の顔を載せている者もいるが、たいがいは、首から下のスーツ姿または私服姿、裸の上半身、どこかの風景写真など、どれも似たようなものだ。組織から指定された条件に合う男を見つけ出すためには、地道にやりとりしていくほかない。
ゆっくりスクロールしてもう一度確認していくと、片手をアップで写したプロフィール画像が目に入った。男らしくて色気のある指だ。嫌いではない。
ハンドルネームは、“M”とだけ。紗恵はそのメッセージをタップした。
『リエさん、はじめまして。プロフ画が素敵で気になりました。よかったらお話ししませんか。同じく既婚、31歳、180センチの筋肉質です』
「プロフ画が素敵、か……」
呟き、紗恵は乾いた笑みを浮かべた。
紗恵のプロフィール画像はというと、赤いワンピースの胸元から濃く色づいた唇までを写した自身の写真だ。いかにも、という感じで好きではないが仕方ない。自己紹介は『リエ、33歳、既婚。気軽に話しかけてね』――これだけだ。