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赤い花~情欲の檻~
第2章 MemoriesI
 I社は数年前に新社屋が完成したばかりだ。今時、社内恋愛は禁止だなんて時代遅れな社則がまかり通っている割に、外観は地方都市にしては珍しいほどオシャレで機能的だ。薄曇りの梅雨空に、グレーの高層ビルがどこか威圧的に自分を見下ろしているような気がして、美華子は小さく首を振った。
 会社を出ると、すぐに大通りがある。横断歩道を渡って少し舗道を歩いた先に、〝ドルフィン〟はあった。
 入り口の曇りガラスの扉を開けると、チリリと愛らしい鈴の音が響き渡る。いつものように、祥吾は奥まった窓際の席に座っていた。〝ドルフィン〟はカウンター席とテーブル席が五つで一杯のこぢんまりとした店である。
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