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甘党な愛
第10章 十
「乗せて行くって、郵便局まで……?」
「ああ」
「な、何で……」
「あんなボロっちい原チャリ乗ってたら途中で止まんぞ。只でさえ屋敷は山の中にある。昼からは雪も降るっていってるし、凍死したくないだろ?」
そりゃしたくないに決まってる。……けど、何故急に親切なんだ。怪しい。怪しすぎる!
「あの原チャリは高校の頃バイトした給料を貯めて、初めて買ったんだ。ダサくないし、まだまだ走れる!」
「なら良い。一人勝手に凍死しとけ。俺達は助けねーからな」
怪しみながら話すと、八雲から封筒をぽいっと芝生へ投げ捨てられる。その行動にもだが、八雲の言葉を聞いて私は焦り始めた。
「ま、待って……」
そういえば最近の山には猪や熊もいるってニュースで見たような。私のようなかよわい女の子はすぐ餌食に……。
「八雲……」
庭から立ち去ろうとする八雲の腕を、思わず掴んでいた。私の移動手段は全て車庫に置かれている原チャリだし、ここへ来るときにも乗ってきた。あの原チャリには青春が沢山詰まっている。が……
「何だよ?」
「乗せてって……」
八雲の腕を掴んだまま、八雲へ頼んだ。