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甘党な愛
第14章 十四
すると――「ちっ」と舌打ちして、八雲はメイド服の胸ぐらから右手を離す。
「……もう、お前らのことなんかどうでも良い。屋敷にいるのも後三週間だしな。勝手にしろ」
「ごめん……心配してくれてありがとう」
「心配なんかするわけねーだろ?」
漸く怒りが収まってくれたと思ったのに、私の一言がまた八雲を怒らせてしまったようで。私は不機嫌な八雲へ、恐る恐る言っていた。
「……ミルフィーユ食べるか?今日のスイーツにと思って作ったんだ……」
「……」
その瞬間、無言になる八雲。だが、ゆっくりと私の方へ右手を出す。
「……何?この手は……」
お手……?八雲にお手をしろと……?
「わん……」
咄嗟におずおずと自分の右手を、八雲の右手の上へ置く。するとキッチンには沈黙が流れ――……
「手じゃねぇよ……ミルフィーユだよ!」
また響き渡る八雲の怒声で、私は漸くハッとして冷蔵庫に冷やしていたミルフィーユを慌てながら出した。