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甘党な愛
第22章 二十ニ
――どうしよう。家に帰りたくなくなってしまった。
「ほら、やる」
「これは……!行こうって行っていたお店の……?」
「……」
初めての事を終え、私がホテルの部屋のソファに座っていると、八雲がスイーツの箱を持って近寄ってきた。それを受け取り、すぐ箱の中を確認すると、色々な種類のケーキが五個ほど入っていて感動する。
「……ありがとう……」
いつの間に買っていたんだろう。嬉し過ぎる!
「一緒に食べよう」
私がそう言うと八雲は私の隣に座り、二人で食べ始める。
「……美味しい……」
「……うまいな」
ケーキを一口食べた途端、二人とも同時にふにゃりと頬が緩む。有名店だけあって、美味しい抹茶のケーキだ……。
「椿、食べたら帰るか?」
「うん……」
のほほんとしながら二人でそのまま食べていると、
「まだ、帰りたくないな……」
隣から乙女の様な言葉が聞こえてきて、思わず八雲を凝視した。
「……?」
今、八雲が言ったのか?!まさか……。違うよな……。驚き過ぎて目玉が飛び出るかと思った。
「ご馳走さま。じゃあ、帰る支度を……」
「椿」
ケーキを食べ終えてソファから立ち上がると、八雲から手を掴まれドキッとしたが。
「どうかした……?」
「椿、お前は、もう帰っても良いのか?」
「ケーキ食べたしな!」
「……」
えっ……何だ。強く握られている手が痛い。ちぎれる。それに、八雲の目が怒っているように私を見ていて、恐ろしい。呪怨だ。
「八雲……」
「俺は……まだ帰りたくねぇ……」
名前を呼ぶと、唐突に体をソファへ引き戻されて、私は呆然とした。