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甘党な愛
第3章 三
――漸く夕食の時間が終わり、ほっとしながらキッチンの洗い場で皿洗いをしていると、後嶋がキッチンへ入ってきた。急に後ろから話し掛けられて、私はその事に気付く。
「藤咲さん、大丈夫?」
「大丈夫じゃない」
「……だよね。何かごめん。俺がメイドの仕事誘ったから」
水道を止め、タオルで手を拭き、後ろを振り返ると、すぐ側に申し訳なさそうな表情をした後嶋が立っていた。
「別に後嶋が悪いわけじゃ……」
「だよね」
「……」
気遣って言ったつもりだったのに、すぐ真顔で開き直られると腹が立つのは何故だろう。
「ああ見えて恵さんも八雲君も良い人だから、頑張って」
無表情で話しながら後嶋がぐっと親指を立てると、私は思わずタオルを手に取って後嶋の首に強く巻き付けた。
「貴様……!全然悪いと思ってないだろ!」
「……」
後嶋は前からこういう奴だ。書店に私の一年遅れで入社してきた後嶋は、私のことを先輩だと敬う素振りを全く見せず、寧ろバカにしている様な態度をいつも取っていた。もう仕事の先輩ではないが、私の方が年上。……絶対に許さん。