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甘党な愛
第9章 九
その晩、夕食の後片付けも終え入浴まで済ませると、私はパジャマ姿で一階の浴室から自分の部屋へ戻っていた。屋敷には普通の浴室と露天風呂付の浴室、二つの風呂があり、私は大体普通の浴室を使う。今日もそっちに入って日頃の疲れを取っていたが……
「……」
兎に角最近疲れてる。婚約者のふりはさせられるは(男として)、夜逃げは失敗するは、八雲から脅されるは……何かリフレッシュ出来ることをしたい。じゃないと、このままメイドの仕事も体が持たない。
「はぁ……また夜逃げしようかな……」
階段を上り二階へ着くと、私は廊下を歩きながら独り言を呟く。そして……
「椿ちゃん」
前方から声を掛けられると、こちらへ向かって歩いてくる恵の存在に気付いた。恵は私服姿だ。まだお風呂入ってないのか……。
「恵……」
「風邪大丈夫?」
「あ、ああ……うん」
「良かった!でも無理は禁物だよ!」
風邪なんてひいてないのに心配してくれるどころか、私の返事を聞いて嬉しそうに微笑む。そんな恵を見ると、私は何故かほっとした。