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普通ってどんなの?
第4章 器用貧乏

「先輩ここって人が来ませんか?」
「うん…だからちょっとだけ」
先輩は、そう言って教卓の奥で私を手招きする。黒板と並ぶ扉からは、一応死角だけど…。
この雰囲気は───
先輩は私を教師が立つ段差に座らせた。私は生唾を飲んで瞳を閉じて、覚悟を決めた。
何もしてこない……あれ?ゆっくり目を開けると、先輩は私を見ているだけだった。私は少し拍子抜けした。
いつもなら、夕方のカーテンが閉まった薄暗い部屋。待ってましたと言う感じで抱き締めるのに…。
手を伸ばすと触れられる距離で、先輩が私を見てる。上矢先輩の精悍な顔立ちを、明るい部屋で目の前にして恥ずかしさが込み上げる。
先輩は何を見てるの?…視線の先を追って私はうつむいた。さっきまでトラック競技に参加していて、まだハーフパンツを履いていないブルマのまま、だらしなく膝が離れている。私は咄嗟に股を閉めた。
私も先輩も視線をあげた。先輩は少し微笑んで頬が火照っている様に見える。いつになく柔らかな表情。私は見つめ合っている事が出来なくて、気になるわけでも無いのに教室を見回した。すぐ側の窓際にピアノ…それから机が10個ぐらいと椅子が15個ぐらい、乱雑に並んでいる。

